Section 01

経営事項審査(経審)とISOの関係

建設会社にとって経審の評点は、公共工事を受注する経営において避けて通れない重要なテーマです。ISO取得は経審の複数の評点に直接関係しており、戦略的に活用することで入札競争力の強化につながります。

+5
ISO 9001 取得客観的評点(経審)加点
+5
ISO 14001 取得客観的評点(経審)加点
3〜70
主観的評点(資格審査)自治体により幅あり
客観的評点

経審での直接加点

ISO 9001・ISO 14001の取得により、経審の客観的評点(Z点)にそれぞれ5点が加算されます。両方取得すると合計10点のアップが見込めます。

ISO9001 → +5点 ISO14001 → +5点
主観的評点

自治体ごとの加点

主観的評点(資格審査)では、自治体により3点から70点ほどの幅で加点されます。自社が入札参加を希望する自治体の加点状況を確認することが重要です。

3〜70点(自治体により異なる)
工事成績評価

総合評価方式への活用

ISOの仕組みを活用することで、施工計画の提案や総合評価方式における評価点アップに繋げることができます。入札戦略としても有効です。

施工計画・評価点アップに直結

⚠ 加点の対象範囲に注意

経審での加点は「技術評価」ではなく「企業評価」です。そのため、営業所登録しているすべての営業所で取得していないと加点対象になりません。支店・営業所がある場合は、すべての拠点での取得状況を確認してください。

Section 02

ISO取得・運用の現状と注意点

ISO認証の取得はゴールではなく、取得後の社内定着・継続的な運用こそが真の価値を生みます。地方中小建設企業における取得・運用の現場で見えてきた注意点を整理します。

🏗️

構築時の「巻き込み」が成否を分ける

業務が多忙であっても、一部の担当者だけで取り組むのではなく、どれだけ多くの社員を構築メンバーに巻き込めるかが、取得後の運用成功のカギとなります。全員参加の意識を醸成することが重要です。

📅

年間行事スケジュールへの組み込み

社員教育・内部監査・安全大会などの時期を会社の年間行事スケジュールに組み込み、全社員に見える形にすることが社内定着の最大のポイントです。「特別な業務」ではなく「通常業務の一部」にする意識が重要です。

📋

営業所すべてでの取得が必要

企業評価としての加点は、すべての営業所登録拠点でISOを取得していることが条件です。一部の拠点のみの取得では加点対象にならないケースがあります。取得計画を立案する際は拠点全体での整合を確認してください。

「業務が忙しいから今年は無理」という声が現場から上がるのは自然なことです。しかし、一部の担当者だけで構築したISOは、取得後に現場から遊離し形骸化します。構築の段階からできるだけ多くの社員を当事者として巻き込むことが、運用を定着させる唯一の方法です。

— 松元義仁(専門誌『アイソス』第173号より)
Section 03

具体的なメリットと活用法

ISOの取得は経審加点にとどまらず、現場の原価管理・社員の経営意識向上・工事成績の改善など、経営全体に広くメリットをもたらします。以下に具体的な活用法を示します。

活用法 01

経審評点アップ勉強会の実施

技術者も含めた勉強会を実施することで、現場代理人が経営的観点(売上や利益の必要性)を持って施工にあたるようになります。現場と経営の橋渡しができます。

活用法 02

利益の出るISO(原価管理の徹底)

現場の実行予算と会社決算の乖離(赤字)を防ぐため、内部コミュニケーションを活性化し、原価管理・一般管理費の計上を全社員で確認する仕組みとしてISOを活用します。

活用法 03

工事成績の向上

「請負工事成績評定要領」に基づき、環境対策やリスクアセスメントなどのISO内容を品質目標の具体的手段として採用することを推奨しています。評定者からの評価点アップが期待できます。

「利益の出るISO」という視点が重要です。
ISOをコストととらえず、現場の原価管理ツールとして機能させることで、実行予算と決算の乖離を防ぎ、実際の収益改善につなげることができます。経営者・管理職・現場代理人が同じ財務指標を見ながら動く仕組みこそ、ISOの本来の活用法です。

Section 04

資格審査における加点状況
(平成24年2月時点)

多くの都道府県・政令指定都市で主観的評点(資格審査)の加点対象となっていましたが、経審の改正に伴い主観点数での加算を廃止・調整する自治体も見られました。以下は当時の主な加点状況の一覧です。

都道府県・自治体 加点状況 ISO9001 ISO14001 備考
青森県 加点あり 10点 10点 各規格で10点加点
山梨県 加点あり 新規10点・更新20点 同左 新規・更新で点数異なる
岡山県 加点あり 環境3点 環境への加点あり
札幌市 加点あり 品質15点 環境10点 政令市の中でも高い加点
北海道 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止
秋田県 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止
愛知県 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止
大阪府 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止
福岡県 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止
宮崎県 加点なし 0点 0点 主観点としての加点を廃止

※ 上記データは平成24年(2012年)2月時点の情報です。経審制度の改正・各自治体の方針変更により、現在の加点状況は異なる場合があります。最新の加点状況は各都道府県・政令指定都市の担当窓口または弊社にご確認ください。

📌 主観点の加点廃止の背景

経審の改正に伴い、一部の自治体では「ISO取得の有無」を主観的点数の加算対象から外す動きが見られました。これは経審の客観的評点(Z点)においてすでにISO取得が加算されることとのバランスを考慮したものと見られています。一方で、客観的評点(Z点)での加算は引き続き全国共通で適用されています。

Conclusion

本稿のまとめ

ISO取得は経審評点アップに直結する

ISO9001・14001の取得で客観的評点(Z点)に各5点、主観的評点(自治体による)にも加点されます。両方取得で経審評点アップと入札競争力強化が実現します。

全営業所での取得が加点の前提条件

加点対象は「企業評価」であるため、すべての営業所登録拠点でISO取得が必要です。一部拠点だけでは加点されないケースがあります。

構築時の全社巻き込みが運用定着の鍵

取得後の形骸化を防ぐには、構築段階からできるだけ多くの社員を当事者として巻き込むことが重要。年間行事スケジュールへの組み込みで社内定着を図ります。

ISOを「利益の出るツール」として活用する

原価管理・工事成績向上・総合評価方式への活用など、ISOを経営改善の実践的なツールとして機能させることで、認証取得コストをはるかに上回るリターンが得られます。

出典・掲載誌について
本ページの内容は、2012年発行の専門誌『アイソス(ISOS)』第173号に掲載された、有限会社都城情報ビジネス 代表取締役 松元義仁氏による寄稿記事「地方中小建設企業におけるISOの運用のヒント」に基づいています。掲載数値・制度情報は平成24年(2012年)2月時点のものです。最新の経審制度・加点状況については各都道府県または弊社にご確認ください。